「朝礼」の起源について考える

企業や学校で毎日あたりまえのように行っている「朝礼」。そのルーツはどこにあるのでしょうか。実は、その歴史についてはよくわかっていません。朝礼研究所が、現存の資料などから考えます。朝礼のネタに困ったとき、参考にしてはいかがでしょうか。

学校行事から定着?

『世界大百科事典 第18巻』(平凡社)によると、朝礼は「宗教教団の勤行や軍組織での点呼などに起源をもつと考えられるが、社会的に広まったのは学校行事としての定着をみてからであろう」とあります。また『岩波教育小辞典』(岩波書店)には、「第2次世界大戦前の日本では、学校全体の統一的精神の涵養を目的として」朝礼が盛んに行われたとあります。江戸時代の寺子屋や藩校では、登校時に個別に挨拶はするものの、統一的な行事としては存在しませんでした。武士や商人の生活も同じで、出勤した直後、上司や同僚が一堂に会する場はなかったようです。

心を一つにする場が「朝礼」に

では、明治以降はどうでしょう。前述の『世界大百科事典』には、朝礼は1学校多級制が一般化する1890年代末(明治30年ごろ)から20世紀初頭にかけて普及・定着するようになったとあります。少人数での教育から大人数での教育に変化する過程で、行われるようになったようです。三重県鈴鹿市にある明治8年創立の合川小学校が公開している資料には、尋常高等学校となった明治39年以降、修学旅行や学芸会が始まるなど、行事や学習に多くの変化があり、朝礼もそのころ始められたとあります。当番による号令で先生に挨拶したり、『教育勅語』を暗唱したりしていたようです。朝礼の始まりは、近代教育の始まりだったのかもしれません。